ミソフォニアの理解を妨げる、5つの間違い。悩みを前に進めるための必須知識。

あなたは、ミソフォニアという現象について、こんなことを思っていませんか?
これらはすべて誤りです。こういった間違った認識を手放さないままだと、ミソフォニアの悩みはますます解消しません。
しかも、この間違った認識におちいっているミソフォニアの人が、実に多いと感じます。
この記事で解説する、間違った思い込みをなくすだけで「殺したくなるほど憎い」といった、常軌を逸した感情を抱く割合が激減するでしょう。
これから先、音が原因で起こる不快感を助長しないためにも、とても重要な内容をお伝えします。
では一緒に、1つずつ間違いを取り除いていきましょう。
間違いその1 ミソフォニアは治せない、新種の精神病だ
ミソフォニアを病気扱いするかどうかは、よく議論の的になっています。
2023年2月執筆時現在、医学会でミソフォニアは「精神病」だと正式に認められていません。
病院で診断書を出してもらう場合は「聴覚過敏」など、別の診断名を付けられることが多い傾向にあります。
医師によっては「ミソフォニア」と診断しているケースも報告を受けているので、病名として診断するかどうかについては、病院の判断に委ねられているのが現状です。
とはいえミソフォニアは、当時者であれば誰もが生活に支障を感じますし、「なにかがおかしくなっている」という点は、間違いありません。この「なにか」については、書籍の第4章で詳しく解説しています。
また、冒頭でも触れましたが、僕自身もミソフォニアを「先天的な障がい」だと、20年以上も思い込んでいました。
なので、ミソフォニアの人が「自分は治せない精神病に違いない」と思い込んでしまうのも、無理はないと思います。
今はとりあえず、ミソフォニアは精神病でも、障がいでも「どちらでもない」か「どちらでも良い」と理解しておきましょう。
間違いその2 ミソフォニアがもっと世に知れ渡れば、優しい世界になる
ミソフォニアの実情が、今後世の中にもっと広まったとしても、期待するほど生きやすくならない理由が3つあります。
理由その1:反応の多様性
理由の1つ目は「ダメな○○」の範囲や個人差が、あまりにも多種多様すぎるからです。
ミソフォニアは咀嚼(そしゃく)音をダメに感じる人が多いなど、一定の傾向こそありますが、もっと具体的に見ていくと、本当に「人それぞれ」でした。
例えば咀嚼(そしゃく)音に関して言えば「クチャクチャ系は気になる、ボリボリ系は気にならない」というタイプの人や「特定の人が出す咀嚼音の、すべてが気になる」というタイプの人など、本当にさまざまなのです。
このユニークさ加減が、非ミソフォニアの人にとっては理解の妨げとなります。
要するに、非ミソフォニアの人の感覚では、説明を聞いても理屈的に辻褄が合わないと感じるので「一貫性がない」とジャッジされてしまうわけです。
ミソフォニアの人が反応するものは、最も大きな枠でまとめると「すべての知覚」で、ここで言う「知覚」とは、見る・聞く・嗅ぐ・触る・味わうといった「五感」を意味します。
つまり、不快感のきっかけが特定の「音」ではないケースも数多くあるので、配慮する側がどうすれば良いのかという、決まり事を設定するまでの道のりが、果てしなく遠いのです。
理由その2:フェアな交渉が成り立たないから
2つ目の生きやすくならない理由は、ミソフォニアの人と非ミソフォニアの人で、我慢の押し付け合いになってしまうことが挙げられます。
「配慮してほしい」という頼みごとは、つまりのところ交渉です。交渉を成り立たせるためには、お互いにとってのメリットが必要になります。
シンプルに説明すると、片方が得をして、もう片方が損を被る条件では、快く応じてもらえないということです。
例えば「音を出さないでくれ」という要求を受けて、配慮する側は「基準値」と「期限」を気にします。
つまり、
という明確なモノサシを求めるのです。
「無期限でお願いします」と言った時点で、協力してもらえる可能性が限りなくゼロになるのは、イメージできるでしょうか?
交渉を断られる理由は、配慮する側へ「期限:エンドレス」に釣り合うメリットを提供するのが、非常に難しくなるからです。
こういった、相手側の視点や思惑を想像する力も、ミソフォニアの悩みを解消するうえで重要な意味を持ちます。
あなたの反応に「人」が関わっている限りは、相手目線の理解も大切にしましょう。
理由その3:アンチも爆増するから
3つ目の生きやすくならない理由は、どの世界にも人の不幸を喜ぶ無粋な輩が、一定割合存在するからです。
ミソフォニアの人の苦手とする音が、より詳しく世間に知れ渡るほど「わざと嫌がる音を聞かせてやろう」と考える悪意のある人間も、間違いなく出現します。
そうなった時に
「そんな音を聞いても、別になんとも思わないけど?」
と本心から思える自分に変われていれば、それが最強の自己防衛法です。
ミソフォニアの不快感をセルフコントロールできないままで、配慮を呼びかけた場合の「リスク」にも目を向けてみましょう。
決して都合の良い反響ばかりが来るわけではないと、イメージできるはずです。
間違いその3 特定の音でイライラする原因は、嫌いな音だから
ミソフォニアの、詳しいメカニズムについては書籍の第3章で解説していますが、あなたはある存在から、特定の音が嫌いだと「思わされている」状態です。
そもそも、音で感じる不快感は「自分の意志と無関係」だという原点に、立ち戻って考えてみる必要があります。
実際、ミソフォニアの人に「その音が嫌いな理由」を具体的にリストアップしてもらうと、自分の意志や好き嫌いをねじ込んだ理由にしてしまう人が大半でした。
書籍内で包み隠さずお話していますので、「不快感を自動的に覚えている」という当たり前の事実を、忘れないでいてください。
間違いその4 嫌いな人の出す音が嫌いなだけ
ミソフォニアに「情け容赦」といった概念はないので、お互いが深く愛し合っていると確信している恋人同士でも、反応する時は反応します。
「嫌だ」と感じる音を繰り返し、強制的に聞く過程で
「この人のこういう所が嫌いだからイライラするに違いない」
といった、偏った思い込みが生まれただけにすぎません。
ミソフォニアのターゲットは、自分の意志で決めているわけではなく自動選択されています。
詳しくは書籍の第4章で説明していますが、今の段階で知っていただきたいのは
相手のことが好きでも嫌いでも、区別なくミソフォニアの反応は起こるという事実です。
疑う余地のない事実と一致した自己認識に、今すぐ書き換えるようにしてみてください。
間違いその5 音が原因のイライラは、耐えるか逃げるのが最善策
物心がつく前からミソフォニアの反応を起こした子どもは、我慢ができないので、号泣することしかできません。
「泣く」という単純な発散行動によって、音の不快感で受けるストレスを消化しようと試みるわけです。
自我が芽生えたあとは、当事者の持って生まれた性格によって取る行動が変わりますが、遅かれ早かれ不快感を「我慢」する結果になることでしょう。
なぜなら、自分が「感覚的に嫌」だと感じる音を出さないでくれ、という要求が、なぜか通じないという共通の経験をするからです。
- 気にしすぎだ
- 神経質すぎる
といった反論で封じられてしまうのは、ミソフォニアの人誰しもが経験する、理不尽な体験のひとつでしょう。
そして次の段階に進んだ人は、なぜ「感覚的に嫌」だと感じるのか?という疑問を解消するために筋の通った理屈を探し求めます。
ところが、しっくりくる理由は、なかなか見つかりません。
音の不快感は、否応なく反射的にやってくる。逃げられない状況に置かれている時は、我慢の一択を強いられ続けて、音を出す対象のことを責め立てたい衝動を抑え込む。
限界までストレスをため込んだ挙げ句、最後は「仕方がない」と愚痴をこぼす。
この一連のプロセスを、当時10代だった僕ももちろん経験してきましたし、他のミソフォニアの人たちが、まるでテンプレートのようになぞっていく様子を、数えきれないほど見てきました。
こうやって「ミソフォニアは我慢するしかない」の固定観念が作られていくわけです。
僕がミソフォニアについて、誰よりも詳しくなった結果として言える「我慢」「仕方がない」の固定観念を打破できる要素は、2つあります。
それは
- ミソフォニアに関する誤解や知識の不足を解消して
- 自分のミソフォニア反応に合った対処法を実践すること
たったこれだけです。
なので、いまの自分に足りない知識を補って、不可思議に思える「感覚的に嫌」の正体をひもといていけば、音の不快感を耐え忍ぶ以外の道も、おのずと見えるようになっていきます。
まとめ
今回の記事は、書籍のまえがきで執筆した内容を、ほぼ同じ内容でご紹介しました。
ミソフォニアに関する有益な情報は少ないので、僕から見ると「そうではない」と思うことが、ほかにもたくさんあります。
あなたも、自分が詳しいジャンルのことを検索してみると、検索上位のページの内容を読んで
「それ、ちょっと違うんじゃない?」
と思うことがあると思います。
ミソフォニアを克服するレベルまで詳しくなった僕は、それと同じ感覚なのだとご理解いただければ。
ミソフォニアに関して「何も知らない」状態がゼロの地点で、「間違った思い込みがある」のはマイナス地点だと思います。
ミソフォニア解消のために、まずはあなたをゼロベースへ整える必要があると考えて、この内容をお届けしました。
参考になれば幸いです。