ミソフォニアで指摘される「矛盾」の正体と、今すぐ知っておくべき7つのこと。
「ミソフォニアのどこに『矛盾』があるのかよく分かりません」というご質問をいただいたので、誤解されがちなことをお伝えします。
ミソフォニアの矛盾については、理解をなるべく深めておかないと、協力してくれる善意ある人も、納得感を得られません。
どんな切り口で相手に説明するのかは自分次第ですが、ミソフォニア当事者として必ず知っておいた方が良いことが 7つあります。
ミソフォニアのことを今よりもっと客観的に、冷静に見ることができるように、ぜひ今回の内容を完全消化しておきましょう。
ミソフォニア感情を抱く前に、あなたは「何も考えていない」のが当たり前
ミソフォニアの反応は、ネガティブな感情を感じる前の段階で「思考」を伴わないのが特徴的です。
一般的なネガティブな感情を抱く時は、 ある出来事に対して瞬間的に何かを思って、次に感情が出るというプロセスを踏みます。
それに対してミソフォニア反応では、この「瞬間的に何かを思う・考える」というプロセスが全く存在しません。
要するに、ある出来事(トリガー音を聞く)からいきなりネガティブ感情へ 「段飛ばし」するのがミソフォニア特有のプロセスです。
なぜ「段飛ばし」されて強い負の感情が出る?「条件反射」のキホン
条件反射とは、自律神経脳が効率的な情報伝達をするために存在する「自動化システム」です。
当事者の脳にとっての「危険な状態」に置かれたとき、より早くリスキーな出来事に対応するために、条件反射のシステムが作動します。
条件反射はたった一回の経験で作られることはあり得ず、繰り返しの体験で形成されていくもの。
つまり条件反射は「考えなくてもいい」「ほったらかしで勝手にやってくれる」という、非常に優秀な自動化システムなのです。
ミソフォニアで発される負の感情は「条件反射の産物」
ミソフォニアが少し特殊なのは、条件反射に「負の感情」が紐付けられてしまっていることです。
自律神経脳にとって負担のかかる状態が続いている時期、 遺伝的要因がある人に限り「特定の音を聞いた時に負の感情を出す」という独特の条件反射が作られます。
ミソフォニアで突然激しい怒りが湧くのは、負の感情が「成長」した結果
心理学の基本概念として、ネガティブな感情は一次感情の「不安」が根底にあり、 次に「怒り」や「悲しみ」などの二次感情が表に出ます。
ところがミソフォニアでは、一次感情の「不安」を飛ばしていきなり「激しい怒り」「ひどい落ち込み」といった強い負の感情が出るのが特徴的。
これは、繰り返し「トリガー音を聞く」という体験で、条件反射がマックスまで強くなり続けた結果だと考えれば、至極当たり前の状態だと言えます。
もしもポジティブな感情との条件反射回路があったとすると?
たとえば「楽しい!」という感情に紐づけられた条件反射回路が作られていたとすると
「特定の音を聞くだけで、思わず飛び跳ねてしまうほどワクワクする」という結果になるのです。
だんだんと、あなたの脳内で何が起こっているのかが、つかめてきたんじゃないでしょうか?
「自分は普通じゃない」はある意味正しく、ある意味間違い
例えば、これから「ご新規」でミソフォニアを発症する人がいたとします。
自分の意思とは無関係に、条件反射による自動システムの力で極限まで発達していく負の感情のストレスに、「ご新規のミソフォニアさん」は我慢できるでしょうか?
「音を聞くだけで理由がわからない怒りが湧く」という現実で、正気でなんかいられないのが「普通」だと思います。
ミソフォニアを発症するのは、確かに「普通とは少し違う脳」の持ち主ですが、理性でコントロールできないほど感情が暴発するのは、至って「普通」です。
ミソフォニアに対しての「正確な理解」や「対処ノウハウ」を深めない限りは、誰も自動的に行われる「条件反射のスイッチ」をオフにできませんので。
ミソフォニアに浅い理解の「合理性・正当性・一貫性」は求めないこと
多くのケースにおいて、ミソフォニアは自分以外の誰か、もしくは動物などが発する音に対して反応します。
ミソフォニア当事者自身も、かならず何らかの「トリガー音」を出していますが、 自分の出す音には反応しない場合がほとんどです。
なぜ?という質問には「当事者の自律神経脳が自動的に判断した結果だ」としか言いようがありません。
ミソフォニアでは「ショートカットコマンド」を強制実行されている
客観的に見ると「なんで自分も音を出しているくせに、他人の出す音ばっかり気にするんだよ」という意見の方に、一貫性や正当性があります。
ところが、ミソフォニア当事者の自律神経脳そのものは常識や正当性を「考える」ことができる脳の部位ではありません。
(思う・考えるのは「左脳」のお仕事です)
つまり当事者の自律神経脳が「危ない」と判断したことに対して条件反射回路を作って、自動的に反応しているだけなのです。
この「自律神経脳のおせっかいな反応」だという前提がないままでミソフォニアを理解しようとすると、「矛盾がある」という議論になります。
なので
ミソフォニアは「特定の出来事が、条件反射回路によって、時短・効率化された結果」であること前提で説明すると、矛盾は全くない。 なにかを「思っている・考えている」という前提で語るから、しっくりこない話になってしまう
という正しい認識を持てれば、他人に説明する時のやり方も、随分と変わるのではないでしょうか?
ミソフォニア感情の矛先が「自分自身」に向くことも実際にある
往々にしてミソフォニアは、「張り詰めた空気」「自律神経脳が適応し切れない早さの変化」という条件のもとで発症します。
私は自分自身の筆記音と、マウスのクリック音がトリガー音として開発されてしまった人です。
なぜ?という答えは前項と同様で、自分自身の自律神経脳が、 私の出す音を「リスキーな音」だと判断してしまったから、という理由に尽きます。
もちろん、自分の出す音全てがダメだったわけではないので、ミソフォニアが「自律神経脳で起こっている特殊な条件反射」だという事実に変わりはありません。
まとめ
- ミソフォニアは、 独特の性質の条件反射
- 条件反射は、脳の正常なシステムが働いて作られる
- 条件反射に「考える」というプロセスは存在しない
- ミソフォニアのネガティブ感情は「学習」によって強まっていく
- ネガティブ感情は「脳の危険」から自動的に守るために発される
- 全ての判断は「自律神経脳の自動システム」が決めている。
- ミソフォニア感情は「条件反射回路」が機能した結果の産物
ミソフォニア当事者は、どうしても猛烈なネガティブ感情の方に目がいってしまいがちです。
「自分自身の本心とは無関係の反応」なんだということをもっと強く自覚するだけで、自分や他人を責める考え方には陥らなくて済むと思います。
今回はミソフォニア当事者の人が常日頃から感じる「なんで?」「どうして?」をなるべく解消できる内容にしてみたつもりです。
あなたの中でモヤっとしていたものが、少しでもなくなれば幸いに思います。
これからも、他の誰でもない自分にとっての幸せのために、ミソフォニアへの理解と納得を深めていきましょう。
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