【2022年最新】ミソフォニアの有病率。全5回の調査データから導き出した平均値や傾向は?

2014年から現在に至るまで、ミソフォニアの大規模なアンケート調査は合計5回実施されています。
過去に行われた、全5回の調査データに基づくミソフォニアの有病率は、平均値でなんと25%もありました。
2020年に実施された最新の調査データを含めて、ミソフォニアの有病率をまとめましたので、ぜひご覧ください。
(ミソフォニアはまだ正式に精神疾患として認められていないので、本来「患者」という表現は適しないことをご了承ください)
ミソフォニア実態調査データの概要と有病率
今回まとめたミソフォニアの研究調査データは、情報ソースの確かなものだけを参照しています。
(※Tomas H Dozier氏とは、公式に情報共有中)
最も新しいミソフォニアの調査データによると、程度の差はあれど約半数にあたる49.1%の人に、何らかのミソフォニア症状が認められました。
これらの研究調査は、いずれもアットランダムな個人に向けて行われた調査なので、「もともとミソフォニアの疑いがある人」を対象には行われていません。
次の項目からは、それぞれの研究調査のもう少し詳しい内容について分析します。
2014年に実施された、Tomas H Dozier氏によるミソフォニアの研究調査
ミソフォニアの有病率 | 310/47人(15%) |
被験者の男女比 | 男性50%/女性50% |
この研究調査は、米ミソフォニア研究所所長のTomas H Dozier氏が、無作為抽出方式のアンケート調査を実施したときの有病率です。
回答者の男女比は50/50、「音」のことや「感受性」については敢えて触れない内容で調査され、対象者はすべて成人でした。
2014年に実施された、南フロリダ大医学部チームによるミソフォニアの研究調査
ミソフォニアの有病率 | 483/131人(20%) |
被験者の男女比 | 男性16%/女性84% |
これは南フロリダ大医学部の研究チームによって行われた、学部生が対象となった査読付き(=信頼性を評価されている)論文データです。
この研究では、483人の学部生(女性84%)のミソフォニア症状に関連する発生率・現象学・相関性・および症状を自己報告法によって調査しました。
調査結果は、ミソフォニアが稀少疾患ではなく比較的一般的な現象であり、被験者の20%以上が臨床的に重大なミソフォニア症状を報告しています。
さらに、ミソフォニア症状は、他の精神疾患および一般的な感覚過敏症と関連性があり、強迫性・不安および抑うつ症状との中程度の関連性を示しました。
特に「不安」の感情は、ミソフォニア発症者が怒りを爆発させるときに密接な関係があると結論付けられています。
2015年に実施された、遺伝子キットの大手販売会社「23andMe.com」の大規模アンケートの結果
ミソフォニアの有病率 | 約80,000人/16,000人(19%) |
被験者の男女比 | 不明。女性が多かった。 |
遺伝学の専門的なデータを数多く取り扱う「23andMe.com」によって実施された、大規模なアンケートの調査データです。
ブログ記事内では、約8万人の顧客を対象に行った社内調査について触れられています。
その中で「他人が噛む音で怒りを感じるか?(はい/いいえ/確かではない)」という3択の質問に約16%が「はい」と答えました。
「確かではない」という回答を「疑わしい」という解釈にした場合は、19%がミソフォニアもしくはミソフォニア予備軍です。
具体的な性別の割合は明らかにされていませんが、肯定的な回答は女性に多く見られました。
2015年に実施された、ヴァージニアコモンウェルス大学によるミソフォニアの研究調査
ミソフォニアの有病率 | 828/156人(15.6%) |
被験者の男女比 | 50%/50% |
2015年に行われた「耐音性の低下に関する博士論文」では、大学生と社会人の混合で、828人を対象にオンラインアンケートが実施されました。
具体的な男女比の割合は明らかにされていませんが、以下のような傾向があったと報告されています。
男性の方がミソフォニア症状を報告している割合が高かった
女性の方がミソフォニア症状の重症度が高かった
この調査から分かることは、ミソフォニアは非常に一般的な症状であり、おそらく成人の約15%(6.5人に1人)に影響を与えているということです。
2020年に実施された、精神疾患の国際専門誌によるミソフォニアの研究調査
ミソフォニアの有病率 | 336/164人(49.1%) |
被験者の男女比 | 27%/73% |
この調査は、ノッティンガム大学の学生を対象に2019年10月22日から2019年11月4日の期間で行われた、現時点で最新の調査データです。
研究結果の公正を保つため、自分がミソフォニアである可能性を自覚している人は、参加「しない」ように事前アドバイスまで徹底されています。
この調査は大学生が対象者だったので、参加者の97%が18~24歳でした。
また、参加者の人種の割合は以下の通りです。
白人 | 66% |
黒人 | 8% |
アジア人 | 16% |
有病率の算出には複雑な方法論が組み込まれているので、比較的わかりやすい6つの質問票の回答データを記載します。
質問 | なし(スコア0) | 軽度(スコア1) | 中度(スコア2) | 重度(スコア3) | 極度(スコア4) |
あなたがミソフォニアの音にさらされる度合いは? | 94人 | 187人 | 52人 | 3人 | 0人 |
ミソフォニアの音によって、社会的・仕事上どのぐらい支障をきたしていますか? | 175人 | 129人 | 27人 | 5人 | 0人 |
ミソフォニアの音はあなたにどのくらいの苦痛をもたらしますか? | 176人 | 79人 | 57人 | 20人 | 4人 |
ミソフォニアの音(についての考え)に抵抗するために、どのくらいの努力を必要としますか? | 78人 | 169人 | 71人 | 15人 | 3人 |
ミソフォニアの音について、思考のコントロールがどの程度必要ですか? | 106人 | 114人 | 73人 | 36人 | 4人 |
ミソフォニアが原因で、何かをしたり、どこかに行ったり、誰かと一緒にいることを避けてきましたか? | 238人 | 60人 | 34人 | 2人 | 2人 |
※スコアとは、承認頻度(当てはまる/当てはまらない)を表しています。
※336人を対象に実施された調査です。
そして、導き出された調査結果は以下の通りです。
グループ | 人数/割合 |
無症候性(合計スコア0〜4) | 171(51%) |
軽度(合計スコア5〜9) | 124(37%) |
中程度(合計スコア10–14) | 40(12%) |
重度(合計スコア15〜19) | 1(0.3%) |
極度(合計スコア20〜24) | 0(0%) |
「無症候性」に分類された人たちは、ミソフォニアの兆候がほぼ全く認められなかった被験者です。
軽度~極度まで、ミソフォニア症状が確認された人の割合を合計すると、過去最高値の49%に及びます。
また、自由記述方式の質問に回答した人(253人)は、回答しなかった人(83人)よりも、ミソフォニアの重症度が統計的に高いと判断されました。
回答されたテーマを分析すると21のキーワードが抽出され、本質を深堀りすると、より広い2種類の層に集約されます。
ミソフォニアの不快症状に対して消極的な反応を示す層と、忌み嫌って拒絶反応を示す層です。
参照:Psychiatric Quarterly
音の刺激に対して消極的な反応を示した層は、上図のキーワードで表現された感情を感じますが、「仕方がない」と容認するスタンスでした。
いっぽう、音の刺激に対して拒絶反応を示した層は、理性で不快感をコントロールすることが困難で、その場から去る選択を強いられた人もいます。
この調査は医学部の学生を対象に実施されたので、「医学部に進学した人」というカテゴリー内で特徴的な傾向なのかもしれません。
もしもこの調査結果を日本の人口に換算したとすると、6000万人近い人が(程度の差こそあれど)音に対する特有の不快症状を経験していることになります。
まとめ
今回まとめたミソフォニアの調査データは、日本で実施されたものではないので、白人の割合が多い調査データです。
性別比が明らかになっている調査データでは、ミソフォニアは女性の有病率が高いという結果でした。
欧米には、基本的に余計な音を立てて食べない食事のマナーが存在するので、アンケート結果が日本人にもこのまま当てはまるとは限りません。
日本国内で同様のミソフォニア実態調査を行った場合は、人種による違いが出る可能性も考えられます。
それを踏まえたうえで結論づけると、ミソフォニアは稀少疾患ではなく、(生活に支障をきたすかどうかを別にすれば)多くの潜在的発症者がいる症状です。
とくに最も新しい2020年の研究データは非常に多角的な分析がなされているため、興味深いデータと言えます。
最新のデータは「ミソフォニア疑いの人」の割合が突出しているように見えますが、対象者にとってさほど問題意識がない「軽度」のケースが多い点に注目です。
「軽度」に当てはまる人の多くは、音で生活に支障をきたさない人も多いことを考慮すると、20%前後が実際の有病率ではないでしょうか。
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