ミソフォニアのパートナーと一緒に暮らしている。
何気なく食事をしていたら、急に相手の空気が変わる。自分が何かしたのか分からないまま、場の雰囲気が壊れる。何に気をつければいいのかも、どこまで我慢すればいいのかも、正直分からない。
この記事は、そういう立場にいる人に向けて書いています。
音を出す側が体験していること
ミソフォニアのパートナーと生活する非当事者が、どういう状態に置かれているかを海外の研究と当事者の声から整理します。
最も多く報告されているのは、「地雷を踏まないよう、常に気を張っている」という感覚です(GoodTherapy, 2024)。食事のたびに、息をするたびに、何かが起きるかもしれないという緊張が続く。これは長期的に見ると、相当な消耗になります。
また、トリガー音を出したときに「判断された・批判された・恥をかかされた」と感じると報告する非当事者も多くいます。自分が何か悪いことをしたわけではないのに、相手の反応によって責められているように感じる。
2025年に発表された研究では、ミソフォニアがカップルの親密さと性的なウェルビーイング(生活の質)に対して、良くない影響を与えると示唆されました。この影響は当事者だけでなく、そのパートナー側にも見られています(Banyra et al., Journal of Hearing Science, 2025)。
私のパートナーは、批判されたと感じるタイプではなく、気を張り続けるタイプでした。どこが地雷かを常に意識しながら一緒に過ごすという状態です。それがどれほど疲れるものか、傍で見ていて伝わってきました。
陥りやすい3つのパターン
非当事者が良かれと思ってやってしまう、あるいは気づかずに起こしてしまう問題のパターンがあります。
パターン1:寄り添いながらトリガー音を出し続ける
当事者が反応しているのを見て「しんどそうだな」と気にかけながら、無意識に繰り返しトリガー音を出し続けるケースです。
当事者の側からすると、攻撃ボタンを連打されながら寄り添われているような、ちぐはぐな感覚になります。相手に悪意がないことは分かっている。でも反応は止まらない。その矛盾が、関係性を屈折させる原因になることがあります。
パターン2:「音が嫌」「嫌がられるのが嫌」の応酬
自分の出す音を嫌がられて良い気がしないのは当然です。傷つくのも当然です。
ただし「音が嫌だ」という当事者の反応と、「嫌がられるのが嫌だ」という非当事者の反応が正面からぶつかり続けると、関係が冷え切っていきます。どちらの感情も正当ですが、その応酬では何も変わらない。そのことに、どこかで気づく必要があります。
パターン3:叱りつける
音を嫌がる当事者に対して、「そんなことでいちいち怒るな」「わがままだ」と叱りつけるパターンです。親が子どものミソフォニアに気づかず、感情的な反応を叱り続けるケースが特に多い。
ミソフォニアの反応は条件反射です。叱ることでその反応が消えることはなく、当事者に「自分がおかしい」という認識を植えつけるだけになります。
パートナーがミソフォニアを認めない・治療を拒否する場合
「ミソフォニアという現象があると伝えたが、本人は否定して治療を拒否している」という状況は、海外のコミュニティでも多く報告されています。
理由として考えられるのは、1つは「自分は病気ではないから治療は不要だ」という撥ねつけです。ミソフォニアは現時点で診断基準が確立されておらず、国際的な診断マニュアルにも記載がありません。当事者が「病気扱いされたくない」と感じて拒否するのは、ある意味で理解できる反応です。
もう一つは、トリガー音を出す相手から治療を勧められることに対する反感もあると思われます。当事者側の意識では「お前が出す音で機嫌が悪くなっているのに、自分だけ頭がおかしいから治せと言いたいのか」と解釈する可能性があるからです。
加えて、現時点でミソフォニアに有効性が証明された治療法は存在しないという現実もあります(Psychology Today, 2024)。「治療してもどうにもならない」という諦めが、拒否の背景にある場合もあります。
非当事者の側からすると、これは孤独な状況です。問題を共有しようとしても受け取ってもらえない。ただ、当事者本人が自分の状態を認めていないときに、外側から変えることには限界があります。
「お互いが変える」という考え方
一方的に自分だけが変わろうとすると、うまくいかないタイミングで孤独感に苛まれます。「こんなに気をつけているのに」という積み重ねが、関係を疲弊させていきます。
状況を良くしたいのであれば、協力できる範囲でお互いが変える——これが現実的なアプローチです。
非当事者側ができること、当事者側ができること、そしてお互いが話し合って決めること。その三つを分けて考えることが、最初の整理になります。
一点だけ付け加えます。当事者がミソフォニアの反応から来る感情を、関係のない場面に持ち込むことがあります。音への強い不快感が、それとは無関係な出来事への怒りや壁として表れる。
「ミソフォニアがなくても、コミュニケーションが難しい」と感じているなら、その部分はミソフォニアとは切り分けて考える必要があるかもしれません。
当事者の反応は、あなたへの個人攻撃ではない
最後に、一つだけ伝えておきたいことがあります。
当事者がトリガー音に反応するとき、それはあなた自身への批判ではありません。条件反射が、意志より先に動いている状態です。「あなたの存在が嫌だ」「あなたの行動が悪い」という意味ではない。
ただし、その反応が繰り返されることで、あなたが傷つくのも本物の痛みです。
どちらの苦しさも本物です。そこを出発点にして、できることを一つずつ探していくしかない——それが、ミソフォニアのパートナーと生活するということの現実だと思っています。
参考文献
- Banyra O, et al. “Misophonia and the quality of sexual life in couples.” Journal of Hearing Science (2025). https://doi.org/10.17430/jhs/214371
- GoodTherapy. “How to Stop Misophonia From Ruining Your Relationship.” (2024). https://www.goodtherapy.org/blog/how-to-stop-misophonia-from-ruining-your-relationship-1206187
- Psychology Today. “Coping With Misophonia Is About Managing Expectations.” (2024). https://www.psychologytoday.com/us/blog/eclectic-approaches/202405/coping-with-misophonia-is-about-managing-expectations
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