もしも自分の子供がミソフォニアになってしまったら?当事者の親が持っておくべき認識。

このサイトにたどりつく方は、とても若いミソフォニア当事者が多いのですが、世代の特性として検索力が高いからだと推察しています。
不快な音の辛さを、家族にどうやって説明すれば分かってもらえるのかわからない。
「反抗期だから文句を言ってるだけ」だと受け止められてしまって、話を真面目に聞いてもらえない。
このままだと、気が変になってしまいそう。
これと同じようなご相談を何度も何度もいただいたので、ミソフォニアの子供を持つ親御さんにも、ミソフォニアへの理解が必要だと考えました。
今回は、家族(子ども)がミソフォニアを発症してしまった場合にどう接すれば良いのか?というテーマでお届けしたいと思います。
大部分のミソフォニア当事者は、思春期に自覚する
私の元に集まっているデータでは、小学校の高学年から中学生の時期にミソフォニアを発症する人の割合が最も多いです。
性別は女性が8割、男性が2割ぐらいで、理由については憶測の範囲を出ません。
なぜ思春期に発症する人が多い?
小学生から中学生になる時期はいきなり環境が大きく変化するうえ、女性はホルモンバランスの変化も激しいので、
というミソフォニアが発現する条件を満たしやすいと考えられます。
「普通の子になれ」は、当事者にとって過酷な要求
親心として自分の子供が「普通の子であってほしい」という願いはあるかもしれません。
しかし、ミソフォニアを発症するのは「少し特殊な脳の子」です。
ミソフォニアは、精神病?
ミソフォニアは厳密に言うと心の病ではありませんが、「普通の子」のようにさせようと思って、気にしている音への我慢を強要すると、 本当に心の病に発展してしまいます。
ミソフォニアがきっかけで発症する可能性がある心の病
- 不安神経症
- 鬱
- 双極性障害
- PTSD
ミソフォニアの子どもは、生きづらい資質持ち
200人以上からのご相談をヒアリングして感じるのが、ミソフォニアの子どもは、感受性や感覚が過敏で、生きづらい「HSP」の資質も併せ持っていることが多いことです。
HSPの子どもってどんな子?を知るには、こちらの書籍にわかりやすく説明されていましたので、ご興味あるかたはご一読をおすすめします。
なので親御さん側は、自分の子供は「音の聞こえ方が普通の人とは少し違う子」なんだととらえてください。
ミソフォニアの原因は遺伝?
ミソフォニアには遺伝的な要因も「ある」とされているので、両親どちらかからの資質に由来する可能性もあります。
ミソフォニアを発症してしまうのは誰にもコントロールできないことなので、子どもが自己価値を失ってしまう前に、環境への配慮を実施したいところです。
家族の無理解は、ミソフォニアの子どもに自己否定感を植え付けてしまう
ミソフォニアの子どもが感じている不快感は、笑い事で済むような強さの不快感ではありません。もしも家族が
「すぐにカッとなる」
という認識で、何も環境改善の配慮を行わないでいると、あっという間に 心の病へと発展してしまいます。
ミソフォニアそのものは心の病ではなく、リスクに過剰反応する「条件反射回路」が作られてしまっているだけです。
子どもの性格で感じたい「本心の感情」と、ミソフォニアの反応で反射的に出てくる「負の感情」は別の存在で、これを子ども自身も区別できないせいで、問題が複雑化します。
ミソフォニアの子どもの脳内では、何が起こっている?
例えるのでしたら、「特定の音→負の感情」というショートカットコマンドが作られてしまって、コマンドの実行を意思でコントロールできない状態です。
どんな人にも備わっている、「条件反射」のシステムが特殊な条件反射を作ってしまっている状態とも言い換えられます。
どうすれば、子どものミソフォニアは良くなる?
条件反射回路は間違った条件反射を、新しい条件反射に「再学習」させることで克服することができますが、
- 対処法の習得前は音の防御を徹底する
- 心理学の基礎レベルの学び
- 間違った思い込みの解除
- メタ認知のテクニックの習得
- 条件反射のメカニズムの理解
ミソフォニアの克服には、最低限これらが土台として必要です。
ミソフォニアの子どもの理解力が育つまでは、悪化させないように「待つ」「苦手な音から守る」というスタンスでいないと、子どもにとっての家庭は音地獄と化します。
なのでミソフォニアの子どもも家族も、音の問題を軽視しないスタンスを持つことが大切です。
ミソフォニア問題で、家庭崩壊を招かないためには?
家族の「このぐらいの音は別に平気だよね」といった軽い認識が問題を深刻化させて、最悪のケースでは家族関係に修復困難な溝を作ります。
当事者本人も問題の重大さを分かっていないケースが多く、怒りの感情が制御不能な状態に陥ってから、ボロボロのメンタルで相談されるケースがとても多いです。
「苦手なら、耳を鍛える」という昭和的な方針は非常に危険
ご家族は、苦手な音に慣れさせようとするのではなく、可能な限り苦手な音を「聞かせない」ようにさせる必要があります。
ご家族にとって大変なことではありますが、繰り返しの体験で「どんどん反応が強くなる」という条件反射の特性上、適切な対応は免れません。
負の感情が「不安」「イラっとする」ぐらいのレベルであれば、当事者が冷静に考えて、短期間で改善することも可能だからです。
ミソフォニアは「特定の音→不快な感情」を繰り返し体験することで、不快な感情が一瞬で沸点を超える怒りまで発達する性質があります。
たとえば当初は
ぐらいだったものが、
繰り返し特定の音を聞くことで
本当にこの状態まで、たやすく負の感情が発達してしまう反応だからです。
自分の子どもが「ミソフォニア」だと分かった時点で、これから先どうしていくか、家族で話し合う必要はあるでしょう。
「家族団らんの幸せ」を捨てたくない親御さんこそ、どうあれば音の問題があっても家族の幸せを守れるのか?ということを、真剣に考えるべきです。
ミソフォニアは、大人になっても発症する?
僕の美容室に通っている50代の女性のお客様と話をしていたところ、ミソフォニアの疑いが濃厚なケースがありました。
50代女性のお客様は、10年ほど前に引っ越しや職場環境の変化などで、非常に落ち着かない時期があったそうです。
ミソフォニアのきっかけは「何でもない日常の音」
その頃、旦那さんが朝に新聞を読んで、「ピシャッ」と新聞を置く時の音が気になって仕方がなかったと話していました。
はじめのうちは新聞を置く時の音に対してイラっとする程度だったらしいのですが、そのうち耐え難いほどの怒りを感じるようになったそうです。
お客様ご自身はとても思いやりがあって情熱的な方で、短気な人なんかではありません。
問題を他人のせいにするようなタイプの方でもありませんが、当時は耐えられなくて、実家のお母さんにも
と愚痴ってしまったくらいだったそうです。
その後旦那さんが新聞を読まなくなったことで、音の問題は解消されたと言う事でした。
というミソフォニア特有の条件反射が作られてしまったのは紛れもない事実でしょう。
ミソフォニアの事例データが、日本よりもたくさん集まっている海外では、「何歳になってもミソフォニアになる可能性がある」とされています。
まとめ
- ミソフォニアは環境や心身の変化が大きいタイミングで、なんの前触れもなく発症する
- ミソフォニアになる子どもは、特殊な感覚を備えた子。親にとっての「普通」を強要すると、子どもの心が壊れる
- ミソフォニアそのものは条件反射の一種。精神病ではない
- 子どもの理解力が育つまでは、可能な限り苦手な音から守る必要がある
ミソフォニアという独特の条件反射を獲得してしまった子どもは、幼すぎるがゆえに、自分が感じる不快感を客観的に伝えることしかできません。
「ワガママ」「気にしすぎ」だと決めつけてしまう前に考えてみた方がいいのは、音を気にしていなかった頃の、子どもの性格です。
自分の子どもって、こんなに怒りっぽい子だった?
機嫌が悪くなる理由が、しっくりこない。
よく分からないタイミングで不安そうなのはなぜ?
普通の嫌がり方と、なんだか違う?
子どもを観察して、違和感を感じたら、子どもが何を・どのように感じているのか、一度じっくりと対話してみるのがおすすめです。
親御さんが問題を「やり過ごそう」とすればするほど、ミソフォニアの子どもの心は耐えがたい不快感に慣れず、確実におかしくなっていきます。
という認識は、ミソフォニアの子どもを持った親御さんが、かならず持っておくべき認識だと思います。
ミソフォニアの本では、「ミソフォニアと家族」という章のなかで、この難しい課題とどのように向き合うべきかをご紹介しました。