「音が気になる」という悩みに直面した方は、いくつもある「音の過敏反応」のどれに自分が当てはまるのか、判別しにくいことでしょう。
とくにミソフォニアと聴覚過敏は混同されやすく、実際には音の感じ方や行動の傾向にかなりの違いがあります。
最も明確な違いは2点あり、音量による感じ方の違いと、音を聞いたときに抱く感情の違いです。
ミソフォニア専門書籍の著者・Hazime(角谷滉一)は、病院へ通院し始めた当初に「聴覚過敏」と誤診されていた経験を持ちます。その体験も含めて、それぞれの違いをお伝えします。
ミソフォニアと聴覚過敏を判別する、一番簡単な方法
ホワイトノイズがうるさくて耐えられないと感じる人は、聴覚過敏とはまだ断定できませんが、ミソフォニアではありません。
ミソフォニアの人は、ホワイトノイズに対してネガティブな感情は湧かず、フラットな気持ちになります。
ミソフォニアと聴覚過敏、3つの相違点
聴覚過敏は発達障害のひとつとして分類されており、現時点で明確な原因やメカニズムは判明していません。
それに対してミソフォニアは、条件反射の仕組みによって特定の音と強い不快感が結びついた状態です。引き金となる原体験があって形成されます。
ミソフォニアと聴覚過敏、それぞれでメカニズムが違うだけではなく、音に対する反応の具体的な違いが3つあります。
気になる「特定の音」の具体的な違い
ミソフォニアで気になる音は「ソフトな音」が多く、聴覚過敏で気になる特定の音は「騒々しい音」が多い傾向です。(一概には区別できない音も含まれます)
ミソフォニア発症者で特に割合の多いトリガー音と、聴覚過敏の方が苦手だとされる音を抜粋して一覧表にしました。
| ミソフォニアのトリガー音 | 聴覚過敏で苦手な音 |
|---|---|
| 飲食するときの音全般 | 救急車のサイレン |
| 呼吸器の生理現象(咳や咳払い) | 掃除機やドライヤーのゴーゴー音 |
| ひそひそ話 | 人込みのガヤガヤした会話 |
| ハイヒールの足音 | 水洗トイレを流す音 |
| 筆記音 | 小銭のガチャガチャ音 |
| コップやカップをコトンと置く音 | ドアをバタン!と開閉する音 |
| スプーンでボウルをコンコンする音 | 赤ちゃんの泣き声 |
| タイピングの音 | 子どもがはしゃぐ声 |
| マウスのクリック音 | 厨房機器の作動音 |
聴覚過敏の方が苦手な音は、一般的にも「けたたましい」もしくはそれなりに「うるさい」と感じる音が多いと思います。対してミソフォニアのトリガー音は、音量であらわすと50db未満(環境庁基準で「生活音の範囲内」と定義されている音)が多く、一般的にうるさくはありません。
音量の感じ方の違い
聴覚過敏の人が訴える音の感じ方は、以下のように表現されます。
- とにかく音がキンキンと鋭くて、痛い
- 空調系のゴーゴーという機械音が、耳に突き刺さってくるように鋭く感じる
- 街中に出ると、耳が騒音を全て拾ってしまうのでうるさくて耐えられない
- 子どもの歓声や赤ちゃんの甲高い泣き声が、脳天をつんざく
- 小さな音でも、耳をふさぎたいぐらい大きな音に聞こえる
いっぽう、ミソフォニアは小さな不快音をこまかく拾いますが、聞こえている音量そのものは普通の感じ方です。
気になる音を聞いたときに「発する感情」の違い
ミソフォニアは、特定の音を聞いた瞬間に発せられる攻撃的な感情(殺したいほど憎い)と罪悪感が特徴的です。
また、ミソフォニアは大きな音による「怯み」がない場合、聴覚過敏の人のように「反射的に耳をふさぐ行動」をとらないことが多いです。(不快音が来る予兆・予備動作があるときや、連続してトリガー音を受けた場合は逃避行動をとります)
それに対して聴覚過敏で感じる感情は、大きな音に驚くショックや音にさらされる不安が大きいと言われます。
「音の大きさ」に対する反応は、ミソフォニアと聴覚過敏でどう違う?
ミソフォニアは小さな音にも不快感を示しますが、トリガー音ではない他の騒音が大きい環境下では、トリガー音から意識が逸れて反応を起こしにくいです。
聴覚過敏では「音が脳にキンキン響く」「音が脳に突き刺さる」という言葉で表されることが多く、聴覚の感度が周波数の高い音に偏っています。
聴覚過敏の特有「聴覚弁別」が苦手
聴覚過敏では「どこ」から「何」の音が発されているのかを正確に認識できないことがあり、この状態は「聴覚弁別が悪い」と表現されます。
聴覚弁別が悪いことによって、騒音の処理に支障をきたしたり、逆に自分の名前を呼ばれた時に呼び声が拾えない原因になることがあります。聴覚弁別の問題は、ミソフォニアのケースではほぼ存在しません。
ミソフォニアと聴覚過敏の共通点は?
似ているようで違う2つの状態ですが、共通するポイントが一つあります。音に対する苦手意識が積み重なることで、その音への警戒感が強まっていくという点です。
ミソフォニアの場合は条件反射の回路が強化されることで、聴覚過敏の場合は不快な体験の蓄積によって、それぞれ音への反応がより敏感になっていきます。
ミソフォニアの対処法と、聴覚過敏の対処法の違い
ノイズキャンセリングは生活上の安全性を確保するため、残念ながらミソフォニアが苦手な音は消せない製品が多いです。
ミソフォニアは静寂を作り出すよりも、気にならない雑音(ノイズ)を積極的に取り入れる対処法が推奨されます。
聴覚過敏では耳栓やイヤーマフを使って小さな音量にする対策を講じるケースが多く、ノイズキャンセリング機能も効果的な対策の一つとなります。
周囲の人から、音に対する過敏反応を理解してもらうためには?
ミソフォニアも聴覚過敏も、見た目では症状のない人と判別がつかないため、周囲に理解されにくい症状です。
職場や学校でどうしても理解を得る必要がある場合は、「診断書」と「ヘルプマーク」で聴覚保護具の着用を認めてもらうのもひとつの方法です。
病院の診断書×ヘルプマークで緊急避難
病院で診断書をもらう必要がある場合、何科に行くべきかは聴覚過敏とミソフォニアでやや異なります。
- 聴覚過敏の場合…耳鼻科か心療内科
- ミソフォニアの場合…心療内科か精神科
自分がミソフォニアなのか聴覚過敏なのかが判断できない場合は、近年敷居の低くなった心療内科を受診するのがおすすめです。
周囲からの理解を促すツール「ヘルプマーク」は各都道府県から配布されているもののほか、株式会社石井マーク様のHPから無償提供されています。
「聴覚過敏保護シンボルマーク」は以下のように定義されています。
1)表示の対象物が聴覚過敏対策の保護具・遮音具などである事を示す 2)聴覚過敏、それに類する「音に対する生理・心理上の苦痛を伴う症状」をもつ事を示す
この定義にある「それに類する症状」にミソフォニアも含まれるため、周囲の理解を得るためのツールとして活用できます。
まとめ
極限までシンプルに要約すると、ミソフォニアは「音が憎い」、聴覚過敏は「音が痛い」という違いです。
- ミソフォニアのトリガー音は生活音レベルのソフトな音が中心、聴覚過敏は騒々しい音が中心
- ミソフォニアは攻撃的な感情が湧く、聴覚過敏は驚きや不安が中心
- ミソフォニアは条件反射の仕組みで形成される、聴覚過敏は発達障害の一つとして分類される
- 対処法も異なり、ミソフォニアには雑音の活用、聴覚過敏には遮音が有効
気になる「特定の音」の種類や感じ方も、ミソフォニアと聴覚過敏では傾向がまったく異なるので、別の状態として区分するのが適切です。
もう少し深く知りたい方へ
最後に2つご紹介させてください。自分の反応がミソフォニアによるものだと分かった上で、その仕組みと向き合い方を知るためのものです。
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