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【海外版まとめ】ミソフォニアの重症度を測る5つの診断方法。

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『音で苦しまない未来が手に入る本 ミソフォニアの原因と対処法』の著者で、ミソフォニアを完全克服できた人。JADP認定心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。健康管理士1級・管理美容師資格も持つ、心と体の健康をマネジメントするスペシャリスト。毎日300人以上が来訪する「ミソフォニア診断テスト」の製作者。

現在、アメリカではミソフォニア(音嫌悪症)の重症度を評価する方法として、主に3種類の質問票が使われています。

  1. ミソフォニア活性化スケール(MAS-1)
  2. アムステルダム・ミソフォニア・スケール(A-Miso-S)
  3. ミソフォニア評価質問票(MAQ)

すこし分かりにくい内容かもしれませんが、診断基準がある海外ではこういう診断方法が用いられているので、参考にしてみてください。

診断方法①ミソフォニア活性化スケール(MAS-1)

Misophonia Activation Scale(MAS-1)は、3種類のミソフォニア重症度評価法の中で、もっともシンプルな診断基準です。

※この記事で使用する言葉「トリガー」とは、ミソフォニア症状の引き金になる存在、「トリガー音」は反応の引き金になる音のことを意味します。

あなたが経験したことを、最もよく表しているレベルを選択してください。

レベル 自覚と行動
0
自覚しているトリガー音だが、不快感を感じない
1
ミソフォニアを持つ人はトリガーの存在を認識しているが、予期不安を感じないか、または最小限にとどめている。
2
自覚するトリガー音は、最小限の精神的不快感・苛立ち・または迷惑という意識を引き起こす。パニックや闘争・逃走反応の症状はない。
3
ミソフォニアを持つ人は、精神的不快感のレベルが高まっていると感じるが、身体的な反応は感じない。ときおり聴覚的・視覚刺激に対して、過剰な警戒心を持つことがある。
4
ミソフォニアの人は最小限の物理的な反応をしている。例えば、音を出すのをやめるようにトリガーへ頼んだり、片耳を目立たないように覆ったり、誰にも言わず音から遠ざかったりするなどの非対立的な対処行動をとる。パニックや逃避症状はない。
5
ミソフォニアの人は、音を嫌がってあからさまに耳を覆う・トリガー音を出す人の真似をする(エコーリア)・またはあからさまな苛立ちを示すなど、より対立的な対処メカニズムを選ぶ。
6
ミソフォニアの人は相当な精神的不快感を経験する。パニックや露骨な闘争・逃走反応が起こり始める。
7
ミソフォニアを持つ人は相当な精神的不快感を経験する。対立的な対処メカニズムの使用頻度が増加する(大声で、より頻繁に)。不必要な性的興奮があるかもしれない。数週間~数か月、長いと数年にわたってトリガー音を想像して、そのたび激しい不快感に襲われる。
8
ミソフォニアを持つ人は、相当な精神的不快感を経験する。非常に暴力的な思想を抱き、理性でのコントロールが困難なレベル。
9
極限値のパニック/怒りの反応をともなう。トリガーに暴力を使わないという、意識的な決断が必要。音の近くから実際に逃げる/または物に八つ当たりして破壊する。パニック/怒り/または激しい苛立ちが、態度に出ることがある。
10
人または動物(例えば、家庭用ペット)に対して実際に暴力をふるう。暴力が自分に及ぶことがある(自傷行為)。

「望まない性的覚醒」はレベル7で起こりうるとされますが、今のところデータに乏しいので、重症度の決定には使用しません。

ミソフォニアの人は誰でも、状況・トリガーの内容・トリガー音の持続期間によって、反応に大きな違いがあります。

より正確な評価を出すためには、1週間単位であなたが経験する最高レベルを選ぶのがおすすめです。

診断方法②アムステルダム・ミソフォニア・スケール(A-Miso-S)

Amsterdam Misophonia Scale(A-Miso-S)は、Y-BOCS(強迫観念・強迫行為の尺度)を応用して作成されており、アムステルダムの研究者によって開発されました。

ミソフォニアの重症度は、7つの質問に回答した点数の合計値によって決定されます。

この通称「A-Miso-S」は、ミソフォニア活性化スケール(MAS-1)と比較して、やや難しい内容の質問が多いです。

Q1. あなたの時間のうち、どのくらいの時間がミソフォニアのトリガー音に支配されていますか?またはトリガー音のことを、どのくらいの頻度で考えますか?

0 なし
1:軽度
1日1時間未満、または1日5回以下。
2:中等度
1日1~3時間、または8回以下。
3:重度
1日3時間以上~8時間、または頻繁に考える。
4:極度
1日8時間を超えるか、または常時。

Q2. ミソフォニアのトリガー音によって、あなたの社会的・仕事的な機能や役割をどの程度妨げられていますか?トリガー音が原因で、仕事を辞めましたか?現在仕事をしていない場合、雇用されていた場合のパフォーマンスにどの程度の影響があるかをお答えください。

0 なし
1:軽度
社会活動や行事・学校活動には軽度の支障があるが、全体的には障害をきたさない。
2:中等度
社会的または職業的パフォーマンスに明確な支障があるが、まだ自分で管理できる。
3:重度
社会的または職業的パフォーマンスに実質的な支障を引き起こす。
4:極度
廃人状態になる。

Q3. ミソフォニアのトリガー音は、どのくらいの苦痛を引き起こしますか?ほとんどの場合、苦痛の内容は苛立ち・怒り・嫌悪感です。(他の一般的な苛立ちや怒りではなく、ミソフォニアのトリガー音になっていると思われる感情のみを評価してください)

0 なし
1:軽度
ときおり苛立ち/不快感を感じる。
2:中等度
不穏な苛立ち/怒り/嫌悪感があるが、まだ自己制御である。
3:重度
非常に不穏な苛立ち/怒り/嫌悪感。
4:極度
ほぼ常時、不穏な嫌悪感/苛立ちがある。

Q4. あなたは、ミソフォニアのトリガー音によって引き起こされる感情を制御するために。どのくらいの努力を必要としますか?(「制御」とは、トリガー音を無視したり、意識的にやりすごすことを意味します。ここでは制御の成功・失敗は問いません。)

0
常に制御する努力をしているか、症状が非常に小さいので、積極的に制御する必要はない。
1:軽度
ほとんどのケースで制御しようと試みる。
2:中等度
制御するための努力をする。
3:重度
トリガー音を制御しようとすることはほぼなく、不快な思考に従うか、多少不本意であっても従う。
4:極度
制御の努力が不可能で、抵抗をあきらめる以外に道がない。

Q5. あなたは、ミソフォニアのトリガー音について、考え方をどの程度コントロールできますか?トリガー音のことを無視したり、やり過ごして解消できますか?

0
完全にコントロールできる。
1:軽度
多くの場合コントロールできる。(思考を止める・やり過ごす)
2:中等度
中程度のコントロールが可能(ある程度思考をとめたり、やり過ごせる。)
3:重度
ほぼ制御できない。(トリガーのことを考えないのは無理で、気を逸らすのが限界)
4:極度
全くコントロールができない。

Q6. ミソフォニアのことを理由に、何かをしたり、どこかに行ったり、誰かと一緒にいることを避けてきましたか? (音楽や他の大きな音で防ぐなど、トリガー音をどの程度意識的に避けていますか?)

0
意識的に回避していない。
1:軽度
軽度、最小限の回避。1日1時間未満、または時折回避する。
2:中等度
中程度、多少の回避。1~3時間/日または頻繁な回避。
3:重度
重度、多くの回避。3 時間から 8 時間/日より大きい。非常に頻繁な回避。
4:極度
ほぼ常時の回避。1日8時間を超える。トリガー音を避けるために、できる限りのことをしている。

Q7.もしあなたがミソフォニアのトリガー音に晒され続けたとして、あなたに起こりうる最悪のことは何でしょうか?自由に記述してください

(記述式回答)

これら7つの質問の合計点によって、以下のようなミソフォニア重症度評価が決定されます。

0-4
ミソフォニアではない
5-9 軽度
10-14 中等度
15-19 重度
20-24 極度

答えやすさと具体性のバランスが良い質問票で、現在最も利用されている評価方法です。

診断の精度をより高めるためには、聴覚以外の誘因(トリガー)も全て考慮して検証しなければなりません。

診断方法③ミソフォニア・ネール評価質問票(MAQ)

マーシャ・ジョンソン博士によって開発された「Misophonia Assessment Questionnaire(MAQ)」では、21の質問と3段階の評価スケールでミソフォニアの重症度を算出します。

スコア 評価の尺度
0 全くない
1 少しの時間
2 かなりの時間
3
ほとんどすべての時間
MAQ 21の質問
  1. 現在、私は特定の音の問題によって不幸を感じています。
  2. 私にとってある特定の音が、問題となっています。
  3. ある音によって、私は怒りを感じています。
  4. 音への不快な感覚を、周囲に理解されないと感じます。
  5. 特定の音の問題は、原因が分かりません。
  6. 特定の音の問題によって、私は無力感を感じます。
  7. 特定の音によって、私の社会生活に支障をきたしています。
  8. 特定の音が原因で、私は孤立しています。
  9. 特定の音が原因で、グループ間の問題が起こっています。
  10. 音の問題は、私の仕事や学校生活に悪影響を及ぼします(現在または最近)。
  11. 音の問題は、私をイライラさせています。
  12. 音の問題は現在、私の生活全体に悪影響を与えています。
  13. 音の問題は、私に罪悪感を与えています。
  14. 私の音の問題は「猛烈」です。
  15. 音の悩みから、誰も助けてくれないと感じています。
  16. 音の問題で、私は絶望感を抱いています。
  17. 音の問題は、時間が経てば経つほど悪化していると感じています。
  18. 音の問題は現在、家族との関係に影響を与えています。
  19. 音の問題は、社交性・コミュニケーションに影響を与えています。
  20. 音の問題を訴えても、周囲には正当性があるものとして認識されません。
  21. 私の人生が今後も音に脅かされるのではないかと心配しています。

質問への合計スコアによって、ミソフォニアを軽度~重度と診断評価します。

1:軽度 0-21
2:中等度 22-42
3:重度 43-63

他の2つのミソフォニア評価スケールと比較して、診断結果がもっとも少ない3段階評価なので、ややざっくりとした区分の印象です。

他の質問票と併用することで、評価&診断の精度を上げることはできると思います。

その他、ミソフォニア重症度の評価・診断方法として使われる2つの基準

主流になっている3種類の質問票のほかにも、ミソフォニアの重症度診断では2つの評価方法が用いられます。

  1. ミソフォニア質問票(MQ)
  2. ミソフォニア影響調査(MIS)

ミソフォニア質問票(MQ)はまだ利用歴が浅いため、内容は良いと思いますが、現時点では有効性が確かでありません。

いっぽうミソフォニア影響調査(MIS)は客観的な指標のみを用いるので、他の診断方法と併用しながら結果を判断する必要があります。

診断方法④ミソフォニア質問票(MQ)

Misophonia Questionnaire(MQ)とは、南フロリダ大学の研究のために開発されたもので、最近の博士論文でも使われています。

この評価方法では、ミソフォニア重症度を3つのパートに分けて評価するのが特徴的です。

  1. ミソフォニア症状
  2. ミソフォニアの感情&行動
  3. ミソフォニアの重症度

パート1:ミソフォニア症状の評価

スコア 該当度
0
全く当てはまらない
1 めったにない
2 たまにある
3 しばしばある
4 常にある
  1. 他の人に比べて、私は音に敏感です。
  2. 人が食事をしている音が気になります。(例:噛む・飲み込む・唇の音・喉を鳴らす音など)
  3. 繰り返し出るタイプの音が気になります。(例:硬い机の上でコンコンと書く音、コツコツという足音など)
  4. ガサガサした音が嫌です。(プラスチック、紙など)
  5. 鼻から出る音が苦手です。(鼻をすする・鼻息・くしゃみなど)
  6. 喉から出る音が苦手です。(咳・咳払いなど)
  7. 特定の子音、または母音が気になります。 環境音が気になります。(時計のカチカチ音など)
  8. その他

パート2:ミソフォニア行動の尺度

スコア 発生頻度
0 一度もない
1 たまにある
2 時々ある
3 頻繁にある
4 常にある
  1. 嫌な音に気づいたら、その場所から離れようと思う。
  2. 嫌な音がしそうな予特定の状況・場所・人を積極的に避ける。
  3. 耳をふさぐ。
  4. 不安になったり、悩んだりする。
  5. 悲しくなったり、落ち込んだりする。
  6. イライラするようになる。
  7. 暴力的な考えを持つようになる。
  8. 物理的な暴力行動に出る。
  9. 攻撃的な言動に及ぶ。
  10. その他

パート3:ミソフォニア重症度の尺度

あなたの音に対する感受性の重症度を、1(最小)から15(非常に重症)までの数値で評価してください。

  1. 敏感になっている音の数
  2. 苦痛の程度
  3. 音による生活への支障

これら3つを総合的に考えて判断してみてください。

重症度 今の状態
1-3
異常なし、または非常に軽度の音嫌悪症。音に抵抗したり、影響を受けたりすることはほとんどない。日常生活での活動にほとんど支障がない、または全く支障がない。
4-6
軽度の音嫌悪症。特定の音に敏感で、自分や観察者には顕著な違いが認められる。音が生活に軽度の干渉を引き起こし、抵抗したり、影響を受けたりすることが最小限の期間で済む。治療の必要性は低い。
7-9
中程度の音嫌悪症。私生活の中で音が重要な干渉を引き起こし、音に対して抵抗したり、影響を受けないようにするために多くのエネルギーを奪われる。日常生活への支障を減らすためには、治療が必要。
10-12
重度の音嫌悪症。毎日が “嫌な音との激しい闘い “のようで、非常に不自由を感じる状態。音への対処にかなり膨大なエネルギーと時間が費やされる。普通の生活を送ることが困難で、治療が必要。
13-15
非常に重度の音嫌悪症。食事や睡眠の観察が必要になるほど、生活に甚大な支障をきたします。家庭で日常生活を過ごすことそのものが非常に困難です。

※音に敏感だという自覚がない方は、この質問票を無視してください。

多面的な分析ができるタイプの質問票です。最も新しい評価方法なので、今後ミソフォニア診断のスタンダードとなる可能性もあります。

診断方法⑤ミソフォニア影響調査(MIS)

Misophonia Impact Survey(MIS)は、ミソフォニア症状が「過去2週間の活動」へどの程度の影響を及ぼしていたか?という点にフォーカスを絞った調査方法です。

ミソフォニア影響調査(MIS)は、それぞれの質問に対して「該当なし」~「極度」まで、0~10の数値で評価します。

問1: 過去2週間の間に、ミソフォニアが家族の生活にどのように支障をきたしたかを評価してください。ミソフォニアが原因で家族を避けた場合は、その要因も評価に含めてください)

問2:過去2週間の間に、ミソフォニアが親密な関係をどのように阻害したかを評価してください。(ミソフォニアのために避けたことがある場合は、その要因も含めて評価してください)

問3:過去2週間の間に、ミソフォニアがあなたの社会生活や他の人との余暇活動をどのように妨害したかを評価してください。(ミソフォニアのためにこれらの活動を避けている場合は、その点も評価に含めてください)

問4:ミソフォニアが仕事や学校の仕事にどのように支障をきたしたかを評価してください。過去2週間にボランティア活動、トレーニング、または同様の活動も評価対象にします。(ミソフォニアのためにこれらの活動を避けている場合は、その点を評価に含めてください)

問5:過去2週間の間に、ミソフォニアがあなたの個人的な活動や一人の時間をどのように妨げていたかを評価してください。ミソフォニアが原因で特定の活動を避けている場合は、その点も含めて評価してください。

合計スコア 評価の結果
0-10
音嫌悪症ではない
11-20 軽度
21-30 中等度
31-40 重度
41-50 極度

ミソフォニアは重症度の度合いに関わらず、治療による変化が遅いケースが多いので、長期的な追跡調査が欠かせません。

ミソフォニア影響調査(MIS)のみで正確な診断結果は得られませんが、ミソフォニアを多角的な観点で観察するためには有益です。

一定期間の「行動」をベースに絞られた質問票。当事者の主観がベースのMAS-1とは対照的なので、分析には併用がおすすめです。

まとめ

  • ミソフォニアの重症度評価で使用される方法には5種類ある
  • ミソフォニア当事者の主観に焦点を当てたものや、客観的観点からの評価など、方法によって切り口が違う
  • どの診断方法が最も効果的か?という結論は出ていないが、ミソフォニアの重症度を数値化できるメリットがある

今回ご紹介した5つの質問票を活用することで、あなたのミソフォニアの重症度を「見える化」することができますが、単にそれだけのことだと思います。

自分の音に対する反応が普通ではないのか、単なる気にしすぎなのかを見極めるためには、おそらく有効です。

日本人のミソフォニアにも大部分が当てはまる内容なので、自己診断を詳しくやりたい方のお役には立つかと思い、まとめてみました。

 

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『音で苦しまない未来が手に入る本 ミソフォニアの原因と対処法』の著者で、ミソフォニアを完全克服できた人。JADP認定心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。健康管理士1級・管理美容師資格も持つ、心と体の健康をマネジメントするスペシャリスト。毎日300人以上が来訪する「ミソフォニア診断テスト」の製作者。

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