「自分はADHDと診断されているけれど、音への反応はミソフォニアなのでは?」
「子どもが特定の音で急に怒り出す。ADHDなのか、ミソフォニアなのか分からない」
似たように見える反応でも、仕組みが違えば、向き合い方も変わってきます。
この記事では、ミソフォニアとADHD・ASD・HSPそれぞれの違いと、重なることがある現実について整理します。
見分けるときの一番大事なポイント
複数の状態を見分けるとき、まず考えてほしいポイントがあります。
「特定の音や、特定の人の音に限定されて反応しているか」
いろんな音や刺激に広く反応しているのか、それとも決まった音・決まったパターンにだけ強く反応しているのか——この違いが、ミソフォニアかどうかを判断する最初のヒントになります。
ミソフォニアは条件反射なので「あの音が来たら反応する」という、決まったパターンがある。この特異性があるかどうかが、他の状態との大きな違いです。
ADHDとの違い
ADHDの人は、いろんな音や光、触感など、広い範囲の刺激に反応しやすい傾向があります。「音全般がうるさく感じる」「騒がしい場所が苦手」という感じです。
ミソフォニアとの違いをまとめると、
ADHD由来の音への過敏
- いろんな音全般が気になりやすい
- 音を聞き分けることに難しさが出ることがある
- 注意が散りやすいことが根っこにある
ミソフォニア
- 決まったパターンの音にだけ強く反応する
- 音を聞き分ける能力自体には問題がない
- 条件反射として形成された反応が根っこにある
「音を聞き分けることに難しさがあるかどうか」は、両者を見分ける上で分かりやすいポイントです。中枢聴覚処理障害(CAPD)との比較研究では、CAPDの人は音の聞き分け・背景音からの分離・聴覚記憶などに困難が見られるのに対し、ミソフォニアではこれらの困難は典型的には見られないとされています(Miller, Psychology Today)。
ミソフォニアの場合、特定の音を鋭く察知する側面はありますが、音を聞き分ける能力自体には問題が見られません。ただし、ADHDとミソフォニアが両方ある場合、当事者の負担は重くなりやすいことが分かっています。
大規模調査では、ミソフォニアとADHDとの併存は5%と報告されており(Schröder et al., PLOS ONE, 2013)、ASDと併発するケースと同様にレアケースの範囲に入ります。また、2024年の研究では、ADHDと診断された青年はそうでない青年よりミソフォニアの重症度が高いことが示されました(Gercek et al., Annals of General Psychiatry, 2025)。
まとめると、ADHDの特性によって注意の制御が難しい状態に、特定の音への強い感情反応が重なることで、消耗が増す可能性があります。「どちらか一方」ではなく「両方あるかもしれない」という視点を持っておくことが大切です。
ASD(自閉スペクトラム症)との違い
ASDとミソフォニアを見分けるとき、一番分かりやすい違いはいつ始まったかです。
ASDは生まれつきの特性で、幼いころから現れます。音への過敏さも、幼少期から見られることが多いです。
ミソフォニアはそれより後に始まることがほとんどです。特定の音との経験が積み重なって、反応が形成されます。
音への反応の性質も違います。
ASDの感覚過敏
- 大きな音、強い光など「強さ」への反応が中心
- 音量が大きいと苦しくなる
ミソフォニア
- 音の大きさより「誰が・どんなパターンで出すか」が大事
- 小さな音でも、特定のパターンなら強く反応する
ただし、幼いころにASDがあり、その後に思春期などでミソフォニアも発症するという組み合わせはあり得ます。それぞれ別の問題として捉えることが必要です。
なお、575名のミソフォニア患者を対象とした大規模調査では、ミソフォニアとASDとの併存は3%と報告されています(Schröder et al., PLOS ONE, 2013)。
HSPとの違い
HSP(Highly Sensitive Person)は、外からの刺激や情報をとても深く受け取りやすい「気質」です。感受性が高く、いろんなことで疲れやすい。これはADHDや発達障害とは別の話で、「その人の感じやすさの特徴」という位置づけです。
ミソフォニアとHSPの関係について、私はこんな考え方を支持しています。
HSP型ミソフォニアと、非HSP型ミソフォニアがある
- HSP型ミソフォニア:感受性が高い気質を持ちながら、特定の音への条件反射も持っている
- 非HSP型ミソフォニア:HSPの気質はないが、特定の音への条件反射が形成されている
感受性が高いからといって、必ずミソフォニアになるわけではありません。ただ、感受性の高さという土台があると、条件反射が形成されやすい場面が増える可能性はあります。
見分けのポイントはシンプルです。特定の音と強い嫌な感情が結びついた条件反射があるかどうか。
HSPの感受性の高さだけでは、特定の音へのパターン化された強い反応の原因にはなりません。
子どもの場合——親が気づくポイント
子どもを見ていて「ADHDなのかミソフォニアなのか分からない」と感じるときのポイントは一つです。
同じ場面・同じ刺激で、繰り返し同じ反応が出ているか
何かをきっかけに急に泣く、怒る、強く拒否する——それが同じパターンで繰り返されているなら、条件反射が起きている可能性があります。
「特定の音、もしくはいつも決まったシチュエーションで、あの反応が出る」という流れが見えるなら、ミソフォニアを疑うヒントになります。
ADHDの場合、反応が出る場面はより広く、状況によってバラバラなことが多いです。ミソフォニアの場合、特定の音・特定の人の行動など、引き金が絞られていることが多い。
子どもは「何に反応しているか」をうまく言葉にできないことがあります。後から振り返って、共通するパターンがないかを探すのが最初のステップです。
「どちらか」に絞るより「両方の可能性を」
ミソフォニアとADHD・ASD・HSPは、それぞれ仕組みが違う別の状態です。
ただ現実には、これらが重なって存在することは珍しくありません。ADHDの特性を持ちながらミソフォニアもある、ASDとミソフォニアが並んでいる——そういう人が、どちらか一方の診断だけを受けていることもあります。
「自分はADHDと言われているけれど、何か違う気がする」という感覚がある場合、ミソフォニアの可能性も並行して考えてみることに意味があります。どちらかに絞り込もうとするより、両方の視点から見てみる——それが現実的なアプローチです。
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参考文献
- Schröder A, et al. “Misophonia: Diagnostic Criteria for a New Psychiatric Disorder.” PLOS ONE, 8(11): e79880 (2013). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0079880
- Gercek HG, Gurbuz Ozgur B, Hayta Z, Sapanca A, Aksu H. “The relationship between cognitive disengagement syndrome and misophonia in children with ADHD.” Annals of General Psychiatry, 24:40 (2025). https://doi.org/10.1186/s12991-025-00583-9
- Rinaldi LJ, Simner J. “Mental Health Difficulties in Children who Develop Misophonia: An Examination of ADHD, Depression & Anxiety.” Child Psychiatry & Human Development, 56:520–532 (2025). https://doi.org/10.1007/s10578-023-01569-y
- Miller S. “Misophonia and Auditory Processing Disorder: A study?” Psychology Today (2016). https://www.psychologytoday.com/us/blog/noises-off/201612/misophonia-and-auditory-processing-disorder-a-study
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