- Q小学生の息子が、食事中の食べる音を嫌がったり、音のことが原因で学校で喧嘩をして、先生から呼び出しをされたりしています。このサイトを見つけて、息子がミソフォニアなんだと分かりましたが、こんな細かい物音を気にしていたら、将来生きていけないんじゃないかと心配です。まだ子どもですし、忍耐力を鍛えれば、もっと音を我慢できるようになるんじゃないかという気持ちもあります。でも、今より息子の症状が悪化してしまうのは困りますし、慣れさせる訓練をした方がいいのか、やめた方がいいのか判断が付きません。(子どもの親より)
- A
やめた方が賢明です。
なぜかを説明するために、私自身が幼かった頃、嫌がる音に慣れさせようとした結果どうなっていったかをお話しします。まったく同じ境遇のご家族はいないと思いますが、「慣れさせるべきか」という観点では参考になる部分があると思います。
私が子どもだった頃の話
私が子どもの頃は、まだ「ミソフォニア」という言葉がありませんでした。当然、周囲の誰も仕組みを知らず、「短気でわがままな子ども」というレッテルを貼られていました。
私自身が覚えている最も古いきっかけは、姉がガムを噛むときのクチャクチャという音です。ただこれは記憶の中で最初に残っているというだけで、もっと早い段階で発症していた可能性もあると思っています。
その後は食べる音全般が気になるようになり、繊維質の食べ物やサクサクと音が出る食べ物が特に苦手でした。毎朝トーストが出たり、食卓に漬け物が並ぶたびに強く反応して、悔し泣きをしていたのを覚えています。
「慣れさせれば克服できる」という方針がもたらしたもの
当時の家庭の方針は「苦手なものは慣れさせて克服させる」でした。父は、反応して睨んでしまうと激しく叱り、精神的に追い詰めるやり方をとる人でした。
子どもの私はそれが理不尽だと感じていても、反射的な反応は止められない。止められないから叱られる。その繰り返しでした。
学校でも、同級生の鼻をすする音やひそひそ話にイライラすることが多く、喧嘩が絶えませんでした。家に帰れば食事中の態度を指摘される毎日で、家にも学校にも安全な居場所がない状態が続きました。
当時の私は「自分の感覚が他の人とは違う」ということに気づいておらず、「どうしてこうなるのか」という疑問だけを抱えていました。その疑問に答えてくれる人は誰もいませんでした。
慣れさせることが逆効果になる理由
当時の経験を振り返ってまとめると、こうなります。
嫌がる音をわざと繰り返し聞かせることで、不快な音に「理不尽」という感情が上乗せされていきました。音そのものへの反応が強くなるだけでなく、その音を出す相手や状況への怒りも積み重なっていきます。
ミソフォニアの反応は条件反射の仕組みで起きており、「慣れさせる」ことは同じ体験を繰り返させることになります。条件反射は繰り返すほど強化されるため、慣れるどころか反応が強まる可能性が高いです。
お仕置きや叱責を伴う場合は、さらに状況が悪化します。反応に対して罰が与えられることで、音への恐怖や怒りが深まり、反応の回路はより強固になっていきます。
親として、今できること
息子さんが今経験していることは、意志の弱さでも性格の問題でもありません。
大切なのは、「反応してしまうこと」を責めないことです。責めてもコントロールできないのがミソフォニアの反応の性質であり、責められ続けると「自分はおかしい」という自己否定が積み重なっていきます。
また、反応が出やすい場面(食事・特定の音が出やすい状況)を可能な範囲で調整することも現実的な対応です。完全に避けることは難しくても、衝突の頻度を減らすことで消耗を防げます。
仕組みを理解した上で関わることが、長期的に関係を保つための土台になります。今この記事を読んでいるということは、その第一歩を踏み出しているということでもあります。
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