ミソフォニアを誘発する、音以外の3種類のきっかけ——視覚・嗅覚・触覚もトリガーになる

ミソフォニアの基礎知識&対処法

ミソフォニアでは「特定の音に反応する」というイメージが強いですが、実際には音以外のきっかけでも反応が起きることがあります。

米国で2015年に実施された調査では、ミソフォニアの当事者の90%に「光景」「動作」など視覚のきっかけもあることが明らかにされています。特にミソフォニアの研究が遅れている日本では、「特定の音にのみ反応する」というのが一般的な認識ですが、音以外のトリガーは多くの当事者に存在しています。

この記事では、音を完全に遮断してもミソフォニアの反応を引き起こす、視覚・嗅覚・触覚のきっかけについて解説します。

じつは音以外にも存在する、ミソフォニアのきっかけ

ミソフォニアの反応は、あるとき急に、何気ない日常の光景がきっかけで起きます。当事者の感覚としては、特定の音を聞いた瞬間に、状況と全く釣り合わない衝動的な感情が突然湧き起こる、というものです。

米国の研究者Thomas H. Dozier氏の調査によると、ミソフォニアの当事者から、聴覚(音)以外のきっかけが現在までに3種類確認されています。

トリガーの種類内容
視覚のトリガー特定の動作や光景を見る
嗅覚のトリガーごくまれ。特定の香り・においを感じる
触覚のトリガー特定のものに触れたり、振動を感じる時

3つのトリガーに共通する傾向は、トリガー音と密接に関わっていることが多い点です。

ミソフォニアの視覚的トリガーの種類と内容

この調査に参加したのは、複数のミソフォニア重症度評価で「中程度」と判定された当事者です。

視覚トリガーの内容発症者の割合
口を開けて噛む78%
足を揺らす・貧乏ゆすり48%
あごの動き42%
反復的な手の動き(親指をいじる・爪をかむ・顔を触るなど)39%
片手動作(顔を触る・食べ物を口に運ぶなど)24%
髪の毛をねじる・触る17%
その他9%

視覚トリガーへ反応するタイプでは、聴覚トリガー(音)と密接に関係しているケースと、全く関係しないケースがあります。「食べる系」の動きは咀嚼音と隣り合わせですが、髪をいじる動作や指差しには、そもそも音が全く伴わないためです。

これには3つの推論が考えられます。

来るべきリスクに備える、予備動作への反応

「これから不快な音がやってくる」という予備動作に対しての逃避反応である可能性です。たとえばゲンコツを振り上げられて「これから殴られる」と予想できるとき、人間は防御か回避の動作をとります。それと同様のメカニズムが働いている可能性があります。

2つの知覚でセットに記憶されているケース

トリガー音と一緒に記憶された光景(「ボリボリという音」と「顎が動く様子」)がワンセットで条件反射化している可能性です。不快な音が全く聞こえなくても、セットで記憶された動作を見ているだけで「また辛い気持ちになりそう」という不安が起きているのかもしれません。

ある光景が純粋にトリガーであるケース

顔や髪を触るだけのケースでは、音が全く関係しません。人間はしぐさを見るだけで感情が動くことがあります。ミソフォニアは今起きている出来事とかけ離れた極端な感情が湧く不随意反応のため、視覚だけが独立したトリガーになることも十分あり得ます。

当事者の体験談:「貧乏ゆすり」を見て気持ち悪くなった話

これはミソフォニアの症状とは関係しないかもしれない、私の体験です。

ある友人と会話をしていたとき、その友人はゆっくりと大きく貧乏ゆすりをしていました。そのうち車酔いしたような気持ち悪さを感じて、「吐きそうだから揺れるのをやめてくれ」と頼んだことがありました。

ミソフォニアの反応として「吐き気」という症状もあるため、あれはミソフォニア特有の反応だったのかもしれない、と今でも思います。他の知り合いに話したら「誰だって貧乏ゆすりを見ていたら気持ち悪くなる」とも言われたので、真相は定かではありません。

ミソフォニアの嗅覚のきっかけについて

嗅覚のトリガーはデータが少ないですが、当事者として実体験があるので理解できる部分があります。

  • 電車内で、おかきのにおいが漂ってきた
  • 職場でカップラーメンを作っている人がいて、匂いがする

いずれも「不安で落ち着かない・ザワザワとした焦燥感がする」という感覚でした。まだ嫌な音を聞いていなくても、これからボリボリとおかきを食べる音・ズルズルと麺をすする音が否応なしにやってくるという明確な予兆があったわけです。

嗅覚はもともと記憶と関連付けが起こりやすいと言われます。視覚トリガーと同様に、「特定のにおい」による条件反射が起きているのではないかと考えています。

なお、タバコの臭いへの強い不快感については、ミソフォニアによる条件反射なのか、単なる嗅覚の敏感さによるものなのか、判別が難しいと感じています。

ミソフォニアの触覚のきっかけについて

  • キーボードに触れる
  • 特定の布地に触れる
  • 他人に触られる、など

タイピング音に反応するタイプで、自分の出すタイピング音でもダメな場合、キーボードに触れること自体が反応のトリガーになります。触覚そのものがトリガーになっていなかったとしても、「また反応してしまうかもしれない」という恐怖感から、触れること自体を避けるようになるケースもあります。

まとめ

アメリカに住むある少女は、咀嚼音に反応するタイプのミソフォニアでしたが、イヤーマフで音を完全に遮断しても、顎が動く動作に強く反応していたと報告されています。

視覚トリガーへの現実的な対処は、反応する光景を視界に入れないこと——つまり「見ない」ことです。条件反射を弱めるには同じ体験を可能な限り避けることが有効であり、トリガーとなる動作を意識的に視界から外すことも、反応の改善に効果が見込めます。

他にも対処法はありますが、いずれのアプローチにおいても、自分の反応の仕組みを正しく理解しておくことが、安全に取り組むための前提になります。

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